仙台地方裁判所 昭和61年(わ)665号 判決
本店所在地
仙台市中央二丁目二番二七号
株式会社百反
代表者代表取締役 岩本秀男こと 金龍政
国籍
韓国
住居
仙台市遠見塚三丁目三番四号
会社役員
金政郁
一九五〇年五月三一日生
本店所在地
仙台市卸町二丁目一番七号
セイブ商事株式会社
代表者代表取締役 遠藤宜
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官井上宏、同鹿野一成出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社百反を罰金七五〇万円に、被告人セイブ商事株式会社を罰金一二五〇万円に、被告人金政郁を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人金政郁に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人株式会社百反(以下「被告会社百反」ともいう。)は、仙台市中央二丁目二番二七号に本店を置き、遊技業を営むもの、被告人岩本政郁こと金政郁は、同会社常務取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人金政郁は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上
一 昭和五八年二月一日から同五九年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一七九、六九〇、四七三円で、これに対する法人税額が七一、三二六、三〇〇円であったにもかかわらず、同五九年三月三一日、仙台市中央四丁目五番二号所在の所轄仙台中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一四二、七二三、三九三円で、これに対する法人税額が五五、八〇〇、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額一五、五二六、二〇〇円を免れ
二 同五九年二月一日から同六〇年一月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一三二、八七〇、五八六円で、これに対する法人税額が五三、一一二、〇〇〇円であったにもかかわらず、同六〇年四月一日、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八六、〇九七、八二六円で、これに対する法人税額が三二、八五九、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二〇、二五二、七〇〇円を免れ
第二 被告人セイブ商事株式会社(以下「被告会社セイブ商事」ともいう。)は、仙台市卸町二丁目一番七号に本店を置き、食料品、雑貨卸売業を営むもの、被告人岩本政郁こと金政郁は、同会社代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人金政郁は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、受取手数料の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上
一 昭和五六年九月一日から同五七年八月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一一、二二二、九八五円で、これに対する法人税額が三、七三一、六〇〇円であったにもかかわらず、同五七年一一月一日、所轄の前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八五〇、五六三円で、これに対する法人税額が二三三、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額三、四九八、二〇〇円を免れ
二 同五七年九月一日から同五八年八月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が五一、八三八、〇九九円で、これに対する法人税額が二〇、七九五、七〇〇円であったにもかかわらず、同五八年一〇月三一日、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が五、五〇八、〇六一円で納付すべき税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二〇、七九五、七〇〇円を免れ
三 同五八年九月一日から同五九年八月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が八〇、七九二、一八六円で、これに対する法人税額が三三、九六五、一〇〇円であったにもかかわらず、同五九年一〇月三一日、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が七一〇、七〇一円で納付すべき税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額三三、九六五、一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人金政郁の当公判廷における供述、並びに同人の検察官に対する昭和六一年九月二五日付供述調書及大蔵事務官に対する昭和六〇年九月九日付、同年一〇月九日付、同年一一月二九日付(二通、一〇枚綴及び一六枚綴のもの)、昭和六一年二月一九日付各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の領置てん末書
判示第一の各事実につき
一 被告人株式会社百反代表者金龍政の当公判廷における供述及び同人の検察官に対する供述調書
一 被告人金政郁の検察官に対する昭和六一年一〇月二日付(一九枚綴のもの)供述調書及び大蔵事務官に対する同年二月一八日付、同年三月一五日付各質問てん末書
一 大蔵事務官阿部次喜作成の売上高等調査書、給料等調査書、預金等調査書、未納事業税等調査書、脱税額計算書説明資料
一 登記官須藤哲郎作成の商業登記簿謄本(株式会社百反についてのもの)
判示第一の一の事実につき
一 岩本秀男こと金龍政作成の修正申告書(昭和五九年一月期分のもの、謄本)
一 大蔵事務官阿部次喜作成の脱税額計算書(同期分についてのもの)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(昭和六二年押第六号の一)
判示第一の二の事実につき
一 岩本秀男こと金龍政作成の修正申告書(昭和六〇年一月期分のもの、謄本)
一 大蔵事務官阿部次喜作成の脱税額計算書(同期分についてのもの)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(同押号の二)
判示第二の各事実につき
被告人セイブ商事株式会社代表者遠藤宜の当公判廷における供述及び同人の検察官に対する供述調書
一 被告人金政郁の検察官に対する昭和六一年一〇月二日付(四一枚綴のもの)供述調書及び大蔵事務官に対する昭和六〇年九月七日付、同年一一月一四日付、同月二九日付(一一枚綴のもの)、昭和六一年二月一七日付、同年三月一一日付各質問てん末書
一 白田正広の検察官に対する供述調書
一 伊藤厳、岡部孝(二通)、横井泰夫、佐藤有朋、後藤盛登、宋石奉、玄奉現、早坂順一、斉藤茂、の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官白田正広作成の受取手数料調査書、簿外経費調査書、預金等調査書、未納事業税等調査書、脱税額計算書説明資料
一 登記官須藤哲郎作成の商業登記簿謄本(セイブ商事株式会社についてのもの)
判示第二の一の事実につき
一 遠藤宜作成の修正申告書(昭和五七年八月期分のもの、謄本)
一 大蔵事務官白田正広作成の脱税額計算書(同期分についてのもの)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(同押号の三)
判示第二の二の事実につき
一 遠藤宜作成の修正申告書(昭和五八年八月期分のもの、謄本)
一 大蔵事務官白田正広作成の脱税額計算書(同期分についてのもの)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(同押号の四)
判示第二の三の事実につき
一 遠藤宜作成の修正申告書(昭和五九年八月期分のもの、謄本)
一 大蔵事務官白田正広作成の脱税額計算書(同期分についてのもの)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(同押号の五)及び法人税修正申告書一綴(同押号の六)
(法令の適用)
一 被告人金政郁
罰条
判示各事実につき 各法人税法一五九条一項
刑種の選択 各懲役刑
併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の三の罪の刑に法定加重)
刑の執行猶予 同法二五条一項
二 各被告会社
罰条
被告人株式会社百反の判示第一の一、二、同セイブ商事株式会社の判示第二の一ないし三の各事実につき各法人税法一五九条一項、二項(但し被告人セイブ商事株式会社の判示第二の一を除く。)、一六四条一項
併合罪の処理 刑法四五条前段、四八条二項
(量刑事情)
被告会社百反は、パチンコ店の経営を主たる業務としているもので、被告人金政郁は同社取締役として、東口店の責任者であったが、前判示第一のとおり、事業資金作りのためとして、昭和五九年一月期、昭和六〇年一月期に納入すべき法人税額のうち合計金三五七七万円余をほ脱したもので、その手段も、会計帳簿等を操作して店の売上金の一部を除外し、仮名口座に隠匿保管していたものであり、又、被告会社セイブ商事は、主に被告会社百反等への景品の納入を業とするもので、被告人金政郁はその代表取締役をしていたところ、前判示第二のとおり、営業関係の資金作りのためとして、昭和五七年八月期から昭和五九年八月期までの納入すべき法人税額のうち合計金五八二五万円有余をほ脱したもので、その手段も、被告会社百反の遊技客らよりの景品の買取から同会社への再度の納入にいたるルートを実質上被告会社セイブ商事で管理、掌握しながら、形式上数社が介在する如く装い、その間の手数料収入を借名口座に隠匿預金していたもので、いずれも、その犯行の態様は、巧妙かつ計画的にして悪質なものと言うべく、脱税の額、ほ脱率も極めて高く、その刑事責任は重いといえ、とりわけ、被告人金政郁は、両会社の脱税を自ら企図して敢行したもので、合計九四〇〇万円余の脱税に関与した刑責は重いと言わざるを得ない。
しかし、当然のこととは言え、本件犯行発覚後においては、右脱税額に見合う修正申告をなして、これらを完納していること、被告人金政郁も犯行を反省し、又、両会社においても同被告人に対して制裁的措置を講じていること等の事情も存在するので、その余の諸事情をも総合斟酌して、主文掲記のとおり、両被告会社については各罰金刑に処し、被告人金政郁については懲役刑に処するとともに特にその刑の執行を猶予するのが相当と認める。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 千葉勝郎)
〈省略〉
賃借対照表
至 昭和60年8月31日 現在
〈省略〉
受取手形割引高 1,750,000
販売費及び一般管理費
自 昭和59年9月1日
至 昭和60年8月31日
〈省略〉
損益計算書
自 昭和59年9月1日
至 昭和60年8月31日
〈省略〉
損失金処理計算書
〈省略〉
上記の通りご報告申し上げます。
昭和60年10月26日
セイブ商事 株式会社
代表取締役 遠藤宜
審査の結果、いずれも適法かつ正確であることを認めます。
昭和60年10月24日
監査役 大友ミキコ
〈省略〉
賃借対照表 昭和61年8月31日 現在
〈省略〉
受取手形割引高 10,908,607
販売費及び一般管理費
自 昭和60年9月1日
至 昭和61年8月31日
〈省略〉
損益計算書
自 昭和60年9月1日
至 昭和61年8月31日
〈省略〉
利益金処分計算書
〈省略〉
上記の通りご報告申し上げます。
昭和61年10月22日
セイブ商事 株式会社
代表取締役 遠藤宜
審査の結果、いずれも適法かつ正確であることを認めます。
昭和61年10月22日
監査役 大友ミキコ
〈省略〉